潮騒
「ううっ…寒い…」
身体が芯まで冷え切り、震えが止まらない。
桐生は小刻みに震える身体を擦りながら、急いで止めてある車に戻った。飲み干したコーヒーの温もりは、もう既に消えて何処にも残っていない。今は氷のように冷たくなった我が身体だけである。律儀に龍司に付き合ったらこの様だ…まぁ、付き合ったのは自分の意志だが、それでも風邪など引くのは御免である。遥に伝染したら拙いな、そんなことを考えながら龍司が乗り込んで来るのを今か今かと待った。
「情けないのぅ、桐生はん」
寒風を伴い、龍司が車に乗り込んでくる。その一瞬に一際大きく身体が震えた。
「風邪引いたらどうすんだ、バカ」
「あれぐらいで引くか、ボケ」
豪快に笑う龍司が憎たらしい。でも言いたいことを言い合うと、車中の温度が少しだけ上がったように感じた。たったそれだけのことに、ホッと安堵する自分が情けない。
「もう帰るんだろう?海は見たし」
「うーん…もうちっと付き合え」
「まだ行きたいところがあるのか?」
「…まぁな」
エンジンが掛かったので、暖房がじわじわと効いてくる。
桐生は温風の吹き出し口に指先を翳し、次なる言葉を待った。
「今度は何処だ」「海の次は山とか言い出すのでは無いか」などと危惧しつつ、気持ちは暖を取ることにばかり行っていた。それだけ真冬の北風はハンパ無かった訳で…。
だから直ぐに気が付かなかった。ほんの数秒だけれど、龍司が意味ありげにこちらを見つめていたことに。
「…ん?なんだ、龍司」
「いや、別に。ほな、行こか」
桐生の問い掛けをさらりと流した龍司は、ギアをドライブに入れ、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
ジャリジャリと砂粒を踏むタイヤの音が耳障りだったが、こんな寒い場所から早く立ち去りたいという気持ちの方が数段勝っていた。コチコチに強張った肩や腕を解し、温風を全身に浴びる。そこまでして、漸く落ち着くことが出来た。
再び舗装された道路に出て、元来た道とは反対の方向へと進路を取った。
この先に龍司の行きたい場所があるらしい。殆ど見たことの無い地名と景色に、桐生は想像することを早々に放棄した。もうどうにでもなれ。ココまで来てグダグダ言っても今更だ。桐生は外の景色をのんびりと眺めながら、半ば投げやりになっていた。
「なんか…車減って来たな」
「そうか?」
暫く走っていると、先ほどの海が遥か後方へと遠ざかっていた。しかも道路を走っている車の数が、特に反対車線を走る車の数が極端に減った。この先にどんな名所や観光スポットがあるのか全くわからない桐生は、また辺鄙なところに連れて行かれるのだろうなと予感した。多分それは当たってしまうのだろう…悲しいことだが。
「すげぇな、龍司」
「あ?何が」
「オマエ、地元じゃないのに、なんでこんなに道詳しいんだよ」
「…そうか?別に、詳しないで」
チラリと桐生を見て、ニヤリと笑う。詳しくないと言うから謙遜しているのかと思ったが、その笑顔を見たらそうじゃないのだとわかった。馬鹿げた悪戯に成功して得意満面になるガキみたいな…そう言えばわかるだろうか。ガキはガキでも超悪ガキな訳だが。
「でも、ナビも無いのに…」
「ああ、だって適当やし」
「…ああ?って、オマッ…!」
目的地があって走っているのではないのか?
道がわかっていて走っているのではないのか?
てっきりすべてを熟知していると思っていたのに、そんな返しがあるとは思ってもみなかった。
桐生は思わず座席から背中を浮かせ、呑気に運転している男に「どういうことだ」と詰め寄った。
行きたいところがまだあると言うから、風邪を引きそうだけれど付き合ったのだ。遥のことも気になっているが、仕方なく彼に従った。それなのに、適当に走っているだけだと彼は言う。
まさか、こんなオチが待っていようとは…桐生は苛立ちと無念さに、がっくりと肩を落とした。 そして、「だとしたら、自分たちは一体、何処へ向かっているのだろうか…?」と、当然のように不安を抱いた。
(………嫌な予感がする…)
こんな場合、大抵よからぬことが起こるのだ。この男と居る場合は特に…。
そしてその予感は的中する。
桐生の不安を煽るように、運転席の龍司は突如豹変した。と言うか、いつもの彼に戻ったとも言う。
「あぁ?ちゅーか、ドライブして海見て…それで『はい、さよーなら』なワケ、あるかいっ!」
「何…って…ぅわっ!」
―ギュルルルルル…ッ―
いきなりの急ブレーキに急ハンドル。龍司の言葉が終わるか終わらないかのタイミングで、無理矢理進路が変えられた。遠心力に持って行かれそうになったが、なんとか踏ん張って座席にへばり付いた。
何と言う乱暴な運転だ。対向車がいなかったから良かったものの、いきなり道路を横切り脇道へと突進するとは…無茶にも程がある。
桐生は当然のように非難の言葉をぶつけた。
「おいっ、何のつもりだっ。無茶な運転しやがって…」
だが、相手はそんな非難も聞く耳を持たない。
「うっさいボケ!」
そう言う男の目は、かなり血走っていた。まるで獲物を追う獣のように息は荒く、真っ直ぐ前だけを向いている。まさに、鬼気迫るという言葉がぴったりで。しかも何やらブツブツと呟きながら運転に没頭していて、見た感じ…かなり危ない。
と言うか…。
これは多分…。
チラリ、と。見たくは無かったけれど、どうしてもそこに目が行く。そこを見れば、相手の心身の状況が、一発でわかってしまうというそこに…目が…。
「……っ」
すると、やはり、何と言おうか、予想通りと言おうか…。
「バカ龍司っ!テメェ、何で勃ってんだよ!」
ゴツッ、と。桐生はその脳天に、力いっぱい拳を振り下ろした。運転している相手は、当然避ける事は出来ずに、思い切り拳を受け止めることになる。だが、相手は痛いと悲鳴を上げるどころか、うんともすんとも口にしない。ただ血走った目を桐生に向け、
「しゃーないやんけっ、勃ったもんはっ!今更引っ込められるかい!」
そんな一喝。しかもその拳が、更に相手の興奮を煽ったらしく、怒りながら更に股間を大きくするという…何とも笑えない状況に陥ってしまった。
笑えない。本当に笑えない。二人きりである以上、その餌食となるのは、桐生以外にはありえないのだから。桐生はその身にひしひしと感じていた…貞操の危機を。本気で走っている車から飛び降りようかと思うほどに。
だが、彼がそうする前に車は急に止まった。盛大な急ブレーキと共に。
「うわっ…!」
「終点や」
人っ子一人いない、そんな場所に車は止められた。鬱蒼と木々が生い茂る中に、ぽっかりと空いた道の路肩。適当なんて言いながら、本能で人気の無い場所を選んでいるのでは無いかと思いたくなる。そんな都合のいい場所だった…これからセックスするには。
「龍司…ちょっと待て…」
「待てん」
「ちょっ……くそっ!」
素早くエンジンを切り、運転席側からドアロックをした龍司は、シフトレバーを軽く乗り越え桐生の上に圧し掛かった。その際、リクライニングをフラットにすることは忘れない。興奮している割には、「コイツ冷静なんじゃないか?」と勘繰りたくなるような手際の良さだった。
「おい、りゅ…じ…」
「ハァ…何や。やめろ言うんは、聞かへんぞ」
「じゃあ…っ……んんっ…」
両手を拘束した彼は、不満を口に出そうした桐生のその唇を、食い付かんばかりに塞いだ。驚き縮こまった舌を引っ張り出し、貪るようにそれを絡める。
「くっ……むっ」
息苦しさから唇の隙間で呼吸しようとしたけれど、それさえも龍司は許さなかった。すべての隙間を埋め尽くすかのように、彼の攻撃は容赦ない。喧嘩の時と一緒である。
油断したら負ける。
彼とのセックスはいつもこんな感じだった。
忙しない息遣いを繰り返し、身体中を弄られる。せっかく温まった肌に、ひんやりと冷たい掌が這い回り何度も震え上がった。
「ちょ…待て、龍司」
「いやや」
こうなるともう手が付けられない。興奮しきった龍司には、どんな抵抗も無意味と成り果てる。
「フッ」
意地の悪そうな笑みを一瞬浮かべた男は、桐生の頬から顎にかけて舌を這わせた。ねろり、と舐め上げ、顎に生えた髭にも唇を寄せる。軽く噛み付いた顎を舐め、そしてそのまま何度目かわからないくちづけを仕掛けて来る。
「んっ……」
執拗なキスの合間に、相手の手がシャツを掻い潜って来た。冷たい指先に「よせ」と身体を捩って抵抗したが、向こうにそんな気はさらさら無いようで。
軽く腹筋を撫でられ、そのまま上へ上へと上っていく指先。寒さと快感の予兆でポツリと立ち上がった胸の突起に、悪戯な指先が容赦なく触れてきた。爪を立て、痛いほど捻り押し潰す。かと思ったら、優しく撫でては悪戯に弄ぶ。ほんの小さな器官なのに、どうしてこうも敏感になってしまうのか…女じゃあるまいし、いくら生理現象とは言え情けない。
桐生は漏れ出そうになる声を懸命に抑えようと、眼前にあった男の肩に噛み付いた。服の上からとは言え、相当な痛みが走った筈だ。けれど、「ハッ、ええで。そうやって噛み付いとったらええわ」と、龍司の反応は憎たらしいほど余裕だった。
「クッ……」
シャツの合わせを強引に引かれ、ボタンが何個か弾け飛んだ。そして顕になった乳首に、彼の唇が吸い寄せられる。硬く尖ったそこに、指の代わりにと舌が這い回る。舐めては噛み付き、吸い上げと、またしても容赦ない攻めが繰り広げられた。
「…っ、アッ…」
チクリと刺すような痛みに混じって、背中にゾクリと走るものがある。覚えのある感覚に、桐生の口からは思わず、「ああ」と溜め息交じりの声が漏れ出た。そんな声を聞かせるのは、相手を増長させるだけだから、聞かせてはいけないのに…わかってはいるのに…。
「ハハッ、気持ちええんか、桐生はん」
「う…るさいっ」
「可愛ないなぁ。もっとアンアン言ってもええんやで」
ここには二人しかおらんと続ける。だが、それでも首を縦にしない桐生に、龍司はもったいぶったような溜め息をついた。
「いつまでもつか…」
「なっ……クッ…」
「クククッ…アンタ、おもろいなぁ」
「黙れっ」
非難めいた視線を投げつけた。が、相手には届かない。車の中でセックスをするという愚行に走った龍司。何としても止めたい。止めなければならないのだ、桐生は。これ以上突き進ませる訳には行かない。桐生は渾身の力を込めて龍司の口許に頭突きを喰らわせた。
ゴンッ!
「くっ…」
それは思い切りヒットした。これで怯んだ隙に龍司の下から抜け出し、ドアのロックを解除して、外に逃げ出して再び臨戦態勢を取れば…何とかなるかな…そんなことを思いながら、桐生は拘束を解くために暴れ出した。
「往生際が悪いで、桐生はん」
「うるせぇ、黙れ」
「黙るんはアンタや」
「なっ…」
ズンッ…!と。今度は龍司の拳が桐生の腹に沈む。自分が下にいるという体勢からか、相手の体重が乗ったパンチは確実に桐生の抵抗力を弱めた。
エンジンを切ったことで、暖房も切れていた。車内温度も低くなり、身体も幾分冷え始めていたのであるが、狭い車内で暴れる二人は熱いと感じる程の汗を掻き始めていた。
胸元にツツー…と滴る汗。その跡を追うように、龍司の舌が這う。そしてそのままそこの突起に吸い付かれた。舐めて噛んでまた舐めてと、その何とも卑猥な動きに、不覚にもドキリと胸が騒ぐ。
(ダメだ。このまま流されたら、またいつもの二の舞で…)
そう頭ではわかってはいた。けれど、下っ腹に力が入らない。今のパンチに起き上がる力を根こそぎ奪われてしまった。
「男って正直やな」
「くっ……ん」
龍司の手が、桐生の陰茎に伸びる。抵抗している割に、先程から痛いほど張り詰めているそこは、龍司と同じ様な状態になりつつあった。それに気を良くした彼はニヤリと笑い、己の分身を桐生のそこに押し当てる。
生温かい、ゴリッと擦れる感覚は、それまで頑張って抵抗していた桐生の、官能のスイッチをあっさりオンにした。
「アッ…!」
仰け反る首筋に、龍司の目は吸い寄せられる。そこに噛み跡を残し、密着した腰を更に卑猥に蠢かせた。
「アァッ……」
「ハッ、めっちゃ硬くなっとる…」
「バ…ッカ」
布越しだというのに、こんなに熱く感じるのはどうしてだろう。朦朧とし始めた頭の中でそんなことを思う桐生の腰も、知らず小刻みに動き出していた。
そこまで来るともう…桐生の理性のタガは外れたも同然で。下半身に未だ残っているスラックスから片足を出し、下着を脱がされる際も、目立った抵抗すらしなかった。
硬くなった勃起に龍司の手が触れる。熱く滾った陰茎と同じく熱を持った掌は、明確な意思を持って上下に動き出した。
「ハッ…アッ……ん…」
グチュグチュと恥ずかしい程濡れた水音が耳を刺激する。濡れて滴り落ちていた先走りの液は、龍司の手の動きを実に滑らかにしてくれた。いやらしく淫猥な動きに翻弄される。煽るように強弱を付けながら、手の動きは一層早くなった。
もうダメだ。
そう頭の中で意識した時にはもう…。
「ぐぅっ……アアッ!」
彼の掌に白濁を撒き散らし、ぐったりと弛緩する身体をシートに投げ出していた。
「イッたな」
そう言って、龍司は濡れた掌を桐生の眼前に翳した。ドロリと滴る体液に青臭い匂い。視覚と嗅覚で、自分が逐情したのを思い知らされる。そんな屈辱感を植え付けられた桐生は、思わずそこから目を逸らした。
そんな彼に、年下の男は「ククク」と目を細める。そしてその濡れた指先を迷うことなく桐生の最奥に突き入れた。
「ぐっ…」
「ええか、ココ」
耳元でそう囁かれ、何度も突き入れては、差し込まれた指をぐるりと回される。その際、最も感じるポイントを掠られ、桐生の身体はビクッと震えた。正直過ぎる我が身が忌々しい。
「もう、よせ…」
そんなことを言ったところで、止める相手ではないとわかっていた。それに、そんなことを口にしていても、頭の中ではもっと確実に快感を引き出して欲しい、そう願っている自分もいた。よせと言った割には、龍司の背中に手を回しているし、体内にある指もキュッと締め付けているのが、その証拠だった。
頭が朦朧となって、言葉と行動が伴わない。自分がどうしたいのかわからなくなっていた。ただわかっているのは、「このままの状態が続いたら自分はきっとおかしくなる」ただそれだけだった。
「ウソはあかんな」
そう言った龍司は、徐に指を引き抜き、己の欲望を取り出した。硬く勃起したそこは、今にもはち切れそうにドクドクと脈打っている。
桐生の喉がゴクリと鳴った。憶えのある感覚に、背筋から腰にかけてぞわりと何かが走る。今から何が起こるのか、そして自分がどうなるのか…考えただけでも、頭の線が焼き切れそうだった。
「いくで」
「やめ…っ」
やがて、満を持して龍司の欲望がゆっくりと桐生の体内へと侵入して来た。ニヤニヤ笑いながら、わざと焦らすようにゆっくりと突き入れられる。彼はいつも最初だけ、ゆっくりと焦らすように動くのだ。どうせやるなら、一気にやればいい。そう思うのに、彼は相手を辱めるようにわざとゆっくり動くのだ。
何て性質の悪い男なのだろう。桐生はそう思わずにはおれなかった。
「バッ……何だって…毎回…こんな……ッ」
「なんや、マンネリや言うんか。なら…」
「えっ…ちょっ!龍…司っ」
明らかに面白がっている風の龍司は、何を思ったか、桐生の片足を担ぎ込みそのままぐるりと体勢を入れ替えた。狭い車内にも関わらず、その早業とも言うべき行動に、桐生は抵抗する暇も与えられない。
「アンタが上になればええ」
いやに堂々とそう言い張られ、桐生は繋がったまま体勢を入れ替えられるという暴挙に出られた。身体の節々は勿論、繋がったそこからは尋常でない痛みが生まれた。思わずうめき声を上げてしまう程で、流石の桐生も一瞬気を失いかけた。
「ほれ、ええぞ」
「バカ野郎が…くそっ…」
繋がったそこからは、苦痛とは違う、ジンジンと痺れるような甘い痛み。もうあと少しでイケる。それはわかっていた。
桐生はゴクリと生唾を飲み込み、「ええい」と覚悟を決めた。バランスを保つように天井に手を突き、暫し呼吸を整える。そして控え目に腰を揺らし始めた。ゆるやかな快感の波が、腰から徐々に上って行く。
だが、そんなまどろっこしい動きに痺れを切らした龍司の腰が、一度大きく突き入れられた。
「アッ…待て」
「いやや、もう待てん」
そんな子供じみた言葉で返され、二度三度と突き上げられる。そんな動きに煽られ、桐生もまた「しょうがねぇ」と大胆に動き出した。気が進まないと思っている割には、ゆらゆらと積極的に動いてしまう。自分でも驚いてしまう程に。
「アッ…アアッ…ハァ…」
「ハハッ…ええわこれ…アンタ、最高や」
「うるせぇ……クッ」
ギシギシと車体が音を立てて揺れる。もし外から見たら、何をやっているのか一目瞭然だろう。恥ずかしいことをしていると頭の隅ではわかっていたけれど、もうそんなことすらどうでもよくなっていた。
己の体重がかかる分、より一層結合が深くなる。そんなことを身をもって体験した彼は、相手が送り出してくる突き上げに合わせるように、腰を揺らし同調するのに夢中になった。
やがてもう直ぐそこに、限界が見え始める。相手の動きに合わせながら腰を振る桐生に、龍司は「もうイッてええぞ」と、二度目の解放を促すために、快感にうち震える男根に手を伸ばした。
「アッ……アアッ!」
「ワシも、そろそろ…っ」
「クッ……アアアァッ!」
とどめを刺すように、一層大きく突き入れられ、桐生は精を放った。同時に、龍司の欲望も吐き出され、互いの身体は白濁でしとどに濡れる。
「………フゥ…」
パタリと倒れ込んできた桐生を受け止めた龍司は、相手を愛おしそうに抱き締めた。掌に触れるぬくもりに安堵の溜め息をつきながら、幸福なひと時に酔いしれる。
だが、その愛しの相手は、キッと龍司を睨み付けると、
「ハァ……ハァ…ハァ……もう…お前との…ドライブは…金輪際…御免だ」
それだけ言って、コテッと気を失うように眠りについた。
疲労困憊で息も絶え絶え。そんな桐生の恨み言に、龍司は一瞬気を取られるも、小さく笑って「そら残念」と肩を竦めた。
それから数日後――桐生だけがきっちりと風邪を引いた。
桐生の龍司に対する怒りが倍増したことは、言うまでもない。
終
*おそまつさま〜。
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